永福町の雄、「永福大勝軒」である。大勝軒系には大きく分けて2種類の系列があって、一方はつけ麺を得意とする「東池袋大勝軒」系、もう一方が魚介類を利かせたスープの表層にラード油の層を湛え、それに比較的細い自家製麺を絡めて食べさせる「永福大勝軒」系である。こちらは、言わずと知れた後者の元祖的存在の店。この製法の影響を受けた後発店も多く、例えば柏「大勝」、大岡山「むらもと」などがその代表格と言える。
麺量が多いのは「東池袋大勝軒」「永福大勝軒」ともに同じであるが、東池袋系が、ガラをベースにしたコッテリ系スープに太麺を絡めて食う男性的なスタイルを維持しているのに対し、こちらは魚介類をベースにしたアッサリ系スープに細麺を絡めて食う女性的なスタイルを維持している。全く対照的な系統だ。
分量はデフォルトで300g前後。一般的な女性にとっては多くて厳しい量ではあるが、男性であれば、食べきることができるギリギリの分量であると考えられる。ただし細麺主体で、スープの量が麺量と較べて多いので、分量の割には案外スルスルと食べきることができる。ゆっくり食べたとしても、麺がスープを吸って悲惨な状況になるといったこともないので、落ち着いて自分のペースで食べればOKだろう。だが、スープの量が他店と較べて桁外れに多いため、完食はなかなか難しい。
具のチャーシュー、メンマともに特筆すべきところはないが、ラード油が含まれた熱々のスープは清涼な海の香りを彷彿とさせる清々しい味で、これ以上コッテリさせすぎるとしつこくなり、これ以上アッサリさせすぎると淡泊になりすぎるのだが、さすが「永福大勝軒」というべきか、絶妙な按配で調整している。それが常連客を量産する理由だと考えている。細麺との絡みも極めて良い。
ただし、麺はデフォルトではやや柔らかいので、麺硬めにして注文すると丁度良いだろう。
評価:(1)麺10点、(2)スープ14点、(3)具3点、(4)バランス8点、(5)将来性7点の計42点。
最近できた店と比較すれば、やや具の内容やクオリティに古さを感じさせるものがあって評点の足を引っ張ってはいるものの、麺、スープの水準は高く、それがバランスの高さに繋がっている。総合的に考えれば、飽きの来ない良質の味を提供する模範的な一軒である。
(最新実食日01年12月)