南砂「とうかんや」、大島「蘭丸」とともに、ラーメン不毛地帯江東区の救世主と噂される名店。門前仲町でも目抜き通りに立地しているわけではなく、いわゆる一本筋向こうの大通りに位置しているため、比較的行列も短めである。ただしそれでもそこは人気店の宿命、余裕を持って店に向かわないと麺切れ終了になってしまうため、注意は必要である。
この店は、介護保険師の御夫婦が、介護保険のセンターで料理を作っていたところ、ラーメンに目覚め、一念発起してオープンさせた店である。実直な人柄の夫婦が作るラーメンはアッサリしすぎていて物足りないと思う人もいるかもしれないが、2回、3回と食べていく内にハマっていく人も多いという曰く付きの店である。ボディーブローのように後からジワリジワリと効いてくるという感じか。
この日僕は「卵ラーメン」をデフォルトで注文。
麺、スープ、具、ともに余計な装飾のない実直で素直な造り。だがそれぞれを単品で眺めると全くもって非の打ち所がない、俊逸な出来映えを誇る。
スープのベースは、トンコツと鶏と野菜。確かに見た感じはどちらかと言えばアッサリ目のスープではあるが、一度口の中に放り込めば、いったい物足りないという評価など誰ができようか、旨味の洪水が乙女の柔肌のように優しく口内を包み込み、至福の境地を約束する。
スープのパートナーとなる麺は太麺ストレート。このテのスープとは意外な組合せである。だがそれが見事に成功している。創意工夫の賜だと言えるだろう。硬めを注文しなくても十分にコシがあり、スープの旨味をガツンと受け止めている。
また、具のチャーシュー、卵、ともに旨い。チャーシューは黒豚の良いところだけを揃えた柔らかく深みがある逸品。煮玉子の造り込みも、すこぶる良好。
遠方からでも是非。江東区のエース級と言っても全く遜色ない店だ。
(1)麺13点、(2)スープ16点、(3)具4点、(4)バランス9点、(5)将来性8点の計50点。