僕の取材方針の根幹は以下の3点である。
- あくまでもひとりのお客さんとして麺と向き合うべし
その店の店主と心ゆくまで麺について語り合うのも、ひとつのラーメン道の楽しみ方であるが、僕は、あくまでも、自分の味覚と麺の真剣勝負を楽しみたい。よって、店主から仕入れる情報や、僕個人が一杯のラーメンから看取できないようなネタは一切取り上げません。
- 初見の店ではオリジナルを吟味すべし
その店が打ち出したい方向性やお客さんに提供したいと店側が考えている味は、オリジナルメニューを吟味すればある程度は判断できるものである。よって、僕は、初めて向かう店で注文するときには、原則として、その店の最も基本的なメニューを注文することにしている(ただし、時によっては、欲張って、違うメニューを頼んでしまうこともありますが)。
- スープは最後の一滴まで飲み干して完食すべし
一杯のラーメンのクオリティを考える場合、麺、スープ、具は、すべてその構成要素であり、麺と具を食べて、スープだけを残す理由は存在しない。また、これはよく言われていることであるが、スープは、レンゲで飲んだときに得られる味と、直接、丼から口へと注ぎ込んだときに得られる味が異なる場合が多い。
よって、僕は、スープを飲み進めるときは、初めはレンゲで味わい、後半、麺の量が少なくなってからは、直接丼からその味を確かめるようにしている。このようなスタンスを貫いていると、スープも最後の一滴まで飲み干さずにはいられなくなってくる。これは、自然の道理というものだろう。
僕の取材方法の特色は概ね、上記に尽きるものであり、それ以外のことについては特に気に留めていない。いや「敢えて」というべきか。あくまでも、ラーメンは楽しく味わうために存在するものであり、厳格な取材を貫き、それに神経を集中させるあまりに肝心の味の吟味が疎かになってしまっては元も子もないのだから。それこそ本末転倒というものだ。
平成15年3月
農林水産省製麺局ラーメン課
担当課長 田中一明