nexttextの中には熱量の高い文章が多いけれども、なかでもこのコーナーはほとんど狂気じみているレベルの熱量である。あなたはテレビや雑誌などで「ラーメン官僚」という人物をご覧になったことはないだろうか?一杯のラーメンについてやや高めの声で滔々と語るまさにラーメンに取り憑かれた国家公務員、田中一明氏。ネットで検索すれば数多くのラーメン評論が出てくる現役バリバリのラーメン評論家である。
彼のデビューの場が何を隠そうnexttextだったのだ。ただし、当時(2003~2006年頃)の肩書はラーメン官僚ではなく、農水省製麺局ラーメン課の課長であった。ご存知のようにラーメン店の栄枯盛衰は非常に激しい。15年以上前のラーメン評論に何の価値があるのか。いやいやいや。もはや店が現存するか否かは問題ではないのだ。このほとばしるラーメン愛をぜひ堪能してほしい。そして、もしそのお店が2021年も終わろうとする現在でも営業していることが確認できれば(というよりも、無くなっている店が少なからずあると思うので事前のネット検索は必須である)、ぜひお店にも立ち寄ってみてほしい。
また、個別店舗の評価以外にも、ラーメン店取材の日々を数十日間にわたって克明に記したラーメン課長日誌「麺日和」、そして近畿2府4県のラーメン事情を論じた「ラーメン論考」も見逃せない傑作である。とりわけ「麺日和」は、ラーメン課の課長としてお国の為とはいえまさに身を削ってラーメンに奉仕する田中氏の姿勢に涙無しでは読めない内容となっており必読と言えよう。
しかし、共通の友人の結婚式で会って以来10年以上田中氏とは顔を合わせていないが、年に700杯のラーメンをすする生活を20年以上続けている彼は今果たして健康を保てているのであろうか。